The
Beginning
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旅のはじまり
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明日を想う誰かが、
何も無いところから一歩を踏み出す。道の先は見えない。近道も、どこにもない。
できるのはただ、
一秒、一分、一日、一月、一年と
たゆまぬ歩みを重ねていくこと。
同じ景色は、一日としてない。
いくつもの出会いに
しずかに磨かれて、
想いはゆっくり熟していく。
時が経てみなければ、
わからないことがある。
人智を越えた所で
物語は書き綴られていく。
いつの日か、
それは一人のものではなくなる。
歩みを受け継ぐ誰かが現れ、
旅はつづいていく。
答えがなく、
終わりのない営み
日本酒の新しい価値を創造したい。
古酒造りには、杜氏のそんな夢が託されていました。
決して焦らず、そして手を抜かず。
一年毎に、品質と味わいの変化を確かめる。
いつ終わるとも知れず、
何年、何十年とそれを続けていく。
“熟成”は進み、誰も見た者のいない領域へ。
次の代へと、夢は受け継がれ、
いつしかその古酒は、蔵人たちみんなの
誇りと希望になっていました。
深まる、
そして、澄み渡る
古酒は、その熟成の過程で
ゆっくりと深みを増し、
色付きを濃くしていきます。
しかし、そこからさらに熟成が進むことで、
いくつかの成分が澱になって下へ沈み、
光を透過させた琥珀のように
澄み渡るクリアな色へと変化していきました。
実際に時間を重ねてみなければ、
出会えなかった発見でした。
日本酒本来の美味しさだけがのこり、
その味わいは、今もなお熟成を進めながら
研ぎ澄まされようとしています。